弁護士法人ユスティティア 森本綜合法律事務所 ~ニュースレター 2013年7月1日号~
1 前回,事業承継の方法には,①親族内承継,②親族外承継,③M&Aの3つがあることをご紹介しました。
今回は,それぞれについてのメリット,デメリットを紹介しておくことにします。今回は,事業承継を考えるにあたっての視点についてです。これも3つの視点に分けられます。①経営権とそれ以外の財産,②株式の価値,③負債の問題の3つです。以下順次お話しします。
2 ① 経営権とそれ以外の財産
経営権(議決権のある株式,事業用資産)は,後継者に,
それ以外の財産(非事業用資産)は,後継者以外の相続人に,
ということになります。
後継者には経営権をきちんと集中させて分散させないことです。
後継者以外の相続人には,遺留分という最低取り分がありますから,その対策のために非事業用の財産を残すということが必要になってきます。議決権のない株式を利用すれば,株式として財産価値はありますが,経営には関与できないため,事業承継の有用な方策となり得ます。この点については,改めて別に述べたいと思います。
3 ② 株式の価値
これまでは,特に,親族内承継のことを念頭に置いて,相続税の関係で株式の価値を抑えるのが有利な方法で,税理士さんを中心にそのような対策が述べられてきました。
これとは別に,第三者に事業を売却するという M&Aの場合,これとは逆に株式を高く売却しないといけないため,客観的な企業価値を高める必要があります。
したがって,事業承継をどのような方向で考えていくかによって,株式の価値を高めた方がよいか,押さえた方がよいかがかわってきますので,早めに方向性を示し,それに必要な対策を考えておくことが必要です。
4 ③ 負債の問題
簡単に図式化すると,
資産>負債(資産超過) であれば,問題ありませんが,
負債<負債(債務超過) のときが問題となります。
事業に収益力がない場合には,清算する方法も視野に置かざるをえません。あるいはリストラなどの工夫で収益力が上がるかということです。事業に収益力があれば,負債と事業を切り離して,事業だけを第三者に承継し,負債だけの会社を清算する方法があります。
負債の金額がそれほど大きくなければ,負債毎第三者に承継してもらう方法もあるかと思います。
5 次回からは,会社法を使った,事業承継の具体的な方法に入っていきましょう。
この記事を担当した弁護士
弁護士法人ユスティティア 代表弁護士
森本 精一
保有資格弁護士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野企業法務、債務整理、離婚、交通事故、相続
経歴
昭和60年3月 | 中央大学法学部法律学科卒業 (渥美東洋ゼミ・中央大学真法会) |
昭和63年10月 | 司法試験合格 |
平成元年4月 | 最高裁判所司法修習生採用(43期司法修習生) |
平成3年4月 | 弁護士登録(東京弁護士会登録) |
平成6年11月 | 長崎県弁護士会へ登録換 開業 森本精一法律事務所開設 |
平成13年10月 | CFP(ファイナンシャルプランナー上級)資格取得 |
平成14年4月 | 1級ファイナンシャル・プランニング技能士取得 |
平成25年1月 | 弁護士法人ユスティティア設立 |