企業の新型コロナウイルス対策
1 まずは,現状把握から
(1) 新型コロナウィルスの現状
長崎県における,令和2年4月26日(日曜日)17時30分現在
PCR等検査陽性者は17人
クルーズ船
PCR等陽性者148人
です。
(2) 緊急事態宣言
全国で,令和2年5月末日まで,改正新型インフルエンザ対策特別措置法32条に基づく緊急事態宣言が発動・延長されました。
長崎県知事は,新型コロナウイルスの感染拡大を受け,県内の接客を伴う飲食店などの「遊興施設」やパチンコ店などの「遊技施設」などを対象に休業要請をしました。協力した事業者には30万円の協力金を支給する方針との報道がなされています。
2 企業の新型コロナウィルス対策とは,
① 従業員の安全(健康・生命)を守ること
② 企業としての責務(利益確保)を果たして企業を存続させること
その両方です。
したがって,従業員の安全を守りつつ,企業の存続・維持も考えなければならないというところに,企業経営の難しさがあります。
3 安全配慮義務
①の法的根拠となるものは,従業員との労働契約に基づく,安全配慮義務です。
労働契約法第5条は,「使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をするものとする。」と規定し,労働契約における使用者の安全配慮義務を明文化しています。
最高裁第三小法廷昭和59年4月10日判決・民集第38巻6号557頁は,
「使用者は,・・・労働者が労務提供のため設置する場所,設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において,労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つているものと解するのが相当である。」
「使用者の右の安全配慮義務の具体的内容は,労働者の職種,労務内容,労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によつて異なるべきものである」
としています。
労働者の職種,労務内容,労務提供場所によって,異なるとしている点に注意してください。
労働者の職種,労務内容,労務提供場所によって,異なるとしている点に注意してください。
4 企業の存続・維持
②の企業の存続・維持の法的根拠は,取締役が会社から経営を委任された経営の専門家であることから当然に導き出されると思います。
5 事業継続計画の立案
そこで,この相反するふたつの要請をどのように実現していくかですが,経営戦略上参考になるのが,事業継続計画= Business Continuity Plan(BCP)という考え方です。
まず,自社の業務の中で,優先継続業務と非優先継続業務に区別します。
優先継続業務に人的資源,資金を集中し,従業員の感染リスクを軽減(時短・感染防止対策など)しながら,企業としての責務と存続を図ります。
次に,非優先業務を一時停止させ,それに伴う影響を最小限に留めるための事前調整を完了し,対外的な混乱を回避します。
リスクの大きさとの兼ね合いで(例えば,市中感染拡大で事業継続事態が困難であるような場合),相対的に対策が変わってくると思います。
事業中断による影響度を評価する観点としては,次のようなものが考えられます。
・利益,売上,マーケットシェアへの影響
・資金繰りへの影響
・顧客の事業継続の可否など顧客への影響,さらに,顧客との取引維持の可能性への影響
・従業員の雇用・福祉への影響
・法令・条例や契約,サービスレベルアグリーメント(SLA)等に違反した場合の影響
・自社の社会的な信用への影響
・社会的・地域的な影響(社会機能維持など)
詳しくは,
をご覧下さい。
この記事を担当した弁護士
弁護士法人ユスティティア 代表弁護士
森本 精一
保有資格弁護士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野企業法務、債務整理、離婚、交通事故、相続
経歴
昭和60年3月 | 中央大学法学部法律学科卒業 (渥美東洋ゼミ・中央大学真法会) |
昭和63年10月 | 司法試験合格 |
平成元年4月 | 最高裁判所司法修習生採用(43期司法修習生) |
平成3年4月 | 弁護士登録(東京弁護士会登録) |
平成6年11月 | 長崎県弁護士会へ登録換 開業 森本精一法律事務所開設 |
平成13年10月 | CFP(ファイナンシャルプランナー上級)資格取得 |
平成14年4月 | 1級ファイナンシャル・プランニング技能士取得 |
平成25年1月 | 弁護士法人ユスティティア設立 |