1 はじめに
「従業員から労働審判を起こされてしまって、後の対応に困っている」
「解雇をした従業員から、解雇無効と過去に遡って賃金の支払いを求められている」
「労働組合から団体交渉をするように通知を受けた」
こういったときには、なるべく早く法律の専門家である弁護士にご相談下さい。
政府の働き方改革の影響を受け,また,電通事件,ヤマトの未払い残業代業などの社会問題を受けて,労働基準監督署も未払い残業代を中心に臨検監督に入ることが多くなっています。
労働基準監督署や裁判所,法改正の動きについては,こちらをどうぞ
>>>平成29年労働法関係の法規改正・判決等の情報
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2 労働審判について
労働審判制度とは、労働者と使用者の間の個別労働紛争について、裁判官1名と労使の専門家2名で構成される合議体(労働審判委員会)が紛争処理を行うという制度です。原則として3回以内の期日で審理しなければならず、調停の成立による解決の見込みがあれば、これを試み、それができない場合に審判を行うという建て付けになっています。この制度は、2006年4月1日から施行されています。
労働審判制度は、申立がなされた日から40日以内の日が第1回期日と定められ、充実した審理のために、答弁書という使用者側の提出する主張書面には、主張・立証計画を明らかにさせ、実質的な記載と証拠書類の添付が要求されており、準備のための時間が限られるため、使用者にとっては厳しい制度になっています。
したがって、労働審判を起こされたらできるだけ早く弁護士に相談されることをお勧めいたします。
労働審判の新受件数の推移については,こちらをどうぞ
>>>労働審判新受件数
3 労働訴訟について
労働訴訟の典型的なものは、地位確認請求であり、地位確認請求とは、従業員が雇い主より解雇された場合、解雇が無効であるとして争う裁判のことで、残業代などの未払い賃金の支払い等もあわせて求められることが多いです。
労働契約が意思表示により終了する場合は,
① 解雇 使用者からの一方的解除
② 辞職 労働者からの一方的解除
③ 合意退職・合意解除 使用者・労働者双方の合意
があります。
解雇には,大きく分けて次の3種類があります。
手続的には,少くとも30日前に解雇の予告をするか,30日分以上の平均賃金を支払わなければならない
① 解雇 使用者からの一方的解除
② 辞職 労働者からの一方的解除
③ 合意退職・合意解除 使用者・労働者双方の合意
があります。
解雇には,大きく分けて次の3種類があります。
手続的には,少くとも30日前に解雇の予告をするか,30日分以上の平均賃金を支払わなければならない
ことになっています。これを解雇予告制度といいます。
懲戒解雇の場合
まずは,業規則に懲戒処分の規定が存在しないことには懲戒処分自体ができません。
次に,懲戒解雇事由に該当するかどうかが問題となりますが、労働契約法は期間の定めがあるか否かで規制を区別しています。
(ア) 期間の定めのない労働契約の場合
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労契法16条)。
次に,懲戒解雇事由に該当するかどうかが問題となりますが、労働契約法は期間の定めがあるか否かで規制を区別しています。
(ア) 期間の定めのない労働契約の場合
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労契法16条)。
(イ) 期間の定めのある労働契約の場合
「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するま での間において、労働者を解雇することができない」と規定しています(労契法17条1項)。この規定に反する契約は無効となります。
「やむを得ない事由」とは,期間の定めのない労働契約の場合における解雇の「客観的に合理的な理 由を欠く」場合と比べ,さらに,限定されたものと考えられます。この「やむを得ない事由」があることについての挙証責任は、使用者が負います。
「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するま での間において、労働者を解雇することができない」と規定しています(労契法17条1項)。この規定に反する契約は無効となります。
「やむを得ない事由」とは,期間の定めのない労働契約の場合における解雇の「客観的に合理的な理 由を欠く」場合と比べ,さらに,限定されたものと考えられます。この「やむを得ない事由」があることについての挙証責任は、使用者が負います。
普通解雇の場合
(ア) 労働者側の事情による解雇
整理解雇、懲戒解雇以外の解雇のことで,
労働契約の継続が困難な事情があるときに限られます。
・•勤務成績が著しく悪く、指導を行っても改善の見込みがないとき
・健康上の理由で、長期にわたり職場復帰が見込めないとき
・著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、改善の見込みがないとき
普通解雇の例として,能力不足解雇についてはこちら
>>>能力不足解雇
整理解雇の場合
①人員削減の必要性、②整理解雇を選択することの必要性、③被解雇者選択の妥当性、④手続きの妥当性(従業員への十分な説明がなされたかなど)が検討要素となります。
原則として労働法は労働者を守ることに重きを置かれた法律です。日本の法律は,解雇できにくく,アメリカなどに比べると解雇規制は厳格です。
したがって,本来解雇できないのに,解雇したとして争う場合には,法律自体の建付が労働者に有利で,会社側にはふりであることを踏まえて,きちんとした主張立証ができるかどうかの判断をしていただく必要があります。対応を誤ると企業イメージの低下を招いたりして大きな経営リスクを負うことになります。
訴訟を起こされたら、相手側との和解に応じるか、判決を求めるか(それに見合う具体的な証拠が存在するか)の判断が求められます。経営者にとってどちらの手続きが最善の結果をもたらすのかについて、事実関係及び証拠関係を整理・把握し、慎重な判断をしなければなりません。これらの判断には法的な専門知識を要する法律専門家のアドバイスが必要になります。
弁護士に依頼をすることで、解決のためにベストな方法が取捨選択できます。実際に訴訟を遂行していく場合には、当然依頼者と打ち合わせながら、依頼者に有利になるような主張を組み立てます。訴訟を起こされた後の対応はもちろんですが、労働者から訴えられないようにするための労働環境の整備や労働条件の調整、解雇しようとする際のアドバイスなどにも応じることができます(むしろ事前の予防の方が大事であると思います)。弁護士法人ユスティティア森本綜合法律事務所にお気軽にご相談ください。
3 仮処分について
解雇された労働者が解雇の無効を争う場合、訴訟であれば最終的な判断がなされるまで時間がかかります。その間、労働者が賃金を得られないと生活に困窮します。そこで、解雇された労働者が従業員たる地位を仮に定めると共に賃金の仮払いを命ずる仮処分がなされるのが典型的な場合です。
従業員たる地位の保全の必要性が問題になることが多く、任意の履行を期待する仮処分であることなどから、賃金仮払いを命じれば足りるとして保全の必要性を否定する裁判例もあります。賃金仮払い仮処分においても、従前の賃金全額ではなく、債権者と家族の生活に必要な限度の額に仮払額を限定すると共に、仮払期間についても、将来分については原則として1年間に限定するなどとするものが多く、また、過去分についても慎重に判断される傾向にあります。
したがって、使用者としては、労働者の現実の生活費を主張し、裁判所に具体的な生活費の限度額に限定して仮払金を出すように求めるべきです。
仮処分の申立がなされると、裁判所において審尋期日が指定され、仮処分決定がなされます。審尋期日において裁判所から和解を勧められる場合も多いので、メリットとデメリットを検討した上で和解に応じるかどうか判断すべきです。
仮処分への対応も、早急に弁護士にご相談されることをお勧めいたします。