兄弟間で遺留分減殺請求を行使した事例
相談内容
母親が亡くなったため、公正証書遺言によりY1さん(次女)、Y2さん(三男)が母親の所持していた不動産を相続することになりました。長男のX1さん、次男のX2さん、五男のX3さんは自分たちにも遺留分を相続する権利があると知り、Y1、Y2さんに対し遺留分減殺請求の意思表示をしました。
Y1さん、Y2さんからの返答がないので、X1さんらは弁護士に相談し、遺留分の不動産を登記してもらうよう裁判で争うこととなりました。
争点
そもそも遺留分を請求できるのか、遺留分の算定において控除すべき問題があるかを両者間で主張しあう形で裁判が進んでいきました。
この事例の場合、以下の3点に焦点を絞り、主張を繰り返していきました。
- 別件でZさん(四男)が父親と母親の遺産分割調停を裁判所に申し立てていました。この調停でX1さんらは相続分をZさんに無償提供することで、この調停から脱退しました(Zさんが母親のお金の面倒をみていたため寄与分が認められると判断しました)。Y1さんは、他の遺産の帰属が確定して初めて自己の遺留分がどれだけ侵害されたか確定するところ、自らの意思で譲渡したX1さんらは遺留分制度を行使できないと主張しました。
- Y1さんはX3さんが母親から生前贈与を受けていたと言い張りました。実際は生前贈与の話があがっていただけで受け取っていなかったので、両者間で言い争う形となりました。
- 遺留分減殺請求には請求できる期限があります。いつ遺留分侵害の事実を知ったかが問題となり、X1さんらが期限内の請求であることを証明することとなります。こちらも両者の意見が食い違い、両者間での言い争いとなりました。
弁護士の提案内容
お互い一歩も譲らず、主張の繰り返しとなったので、裁判所から和解金での和解案の提示がありました。
和解金の算定が遺留分の算定となったため、算定方式を相手方と争いました。
それと同時に、お金どうこうではなく裁判で決着をつけたいというX1さんらに対し、早期解決のため和解で納得してもらえないか説得しました。
結果
Y2さんは、裁判外でこちら側が算定した遺留分の金額を支払われたので、裁判は取り下げました。
Y1さんとの間で裁判が残りましたが、Y1さんがX1さんらに、こちら側が算定した遺留分の和解金からいくらか減額した金額を、それぞれ支払うという条件で和解しました。
弁護士の所感
①の論点については、算定したところ当初の金額より金額が上がるとの主張をしました。
相手方の②の主張は認められないと思います。③も当方の主張を支える証拠は存在していました。結局、当初の金額からそれほどかけ離れたものではなかったので、早めにY1さんも支払っていただければ解決したのにという感想です。
法律的には
①不動産の評価を固定資産税の倍率という相続税評価を基準にしたこと、
②遺留分の算定基礎となる遺産から、債務は控除されるところ、被相続人の連帯債務がありました。
しかし,この連帯債務については,別の連帯債務者が支払っており,弁済不能の状態にあるため被相続人がその債務を履行しなければならず,かつ,その履行による出捐を主たる債務者訴外功に求償しても返還を受けられる見込みがないような特段の事情が存在する場合ではないので,この債務を含めるのは相当ではないといえます(保証債務に関する東京高裁平成8年11月7日判決・判時1637号31頁参照)。
昭和60年3月 | 中央大学法学部法律学科卒業 (渥美東洋ゼミ・中央大学真法会) |
昭和63年10月 | 司法試験合格 |
平成元年4月 | 最高裁判所司法修習生採用(43期司法修習生) |
平成3年4月 | 弁護士登録(東京弁護士会登録) |
平成6年11月 | 長崎県弁護士会へ登録換 開業 森本精一法律事務所開設 |
平成13年10月 | CFP(ファイナンシャルプランナー上級)資格取得 |
平成14年4月 | 1級ファイナンシャル・プランニング技能士取得 |
平成25年1月 | 弁護士法人ユスティティア設立 |