DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、一般的には配偶者や恋人など親密な関係にあるまたはあった者から振るわれる暴力のことをいいます。DV防止法においては、配偶者間の暴力に限定しています。
現状
平成24年度における配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数は、8万9490件で毎年増加しています。
警察における暴力相談等の対応件数も平成24年において、4万3950件となっています。
DV防止法による保護の対象となる者
・「配偶者」です。恋人は含みません。
・内縁関係にある者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者)を含みます(DV防止法1条3項)。
・外国人でもよいです。入国管理局には本人の意思で出向くよう薦めるに留める対応がなされています。
・男性でも対象となります。
・元配偶者であっても、婚姻中に配偶者からの暴力を受け、更に離婚後も引き続き暴力を受けるおそれがある場合には対象になります。
DV防止法の対象となる暴力・脅迫(DV防止法10条1項本文)
① 身体に対する暴力(言葉による暴力は含まないと解されています)
② これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす暴力(精神的暴力・性的暴力)
③ 生命又は身体に対し害を加えることを告知してする脅迫(19年改正)
保護命令申立のための要件
① 形式的要件
ア 配偶者暴力相談支援センターまたは警察の職員に相談したり、援助または保護を求めた事実があること
イ 上記事実がない場合には供述書面を作成し、公証人に認証してもらうこと(宣誓供述書)
→真実性の担保の趣旨
② 実質的要件
ア 申立人が被害者であること
イ 配偶者(その意味については上記3参照)から上記4記載の暴力・脅迫を受けたこと
ウ さらなる身体に対する暴力により、生命又は身体に重大な被害を受ける怖れが大きい
保護命令の種類
保護命令には、16年改正、19年改正の結果下記の合計5種類があります。
① 接近禁止命令(DV防止法10条1項1号)
被害者の避難先や住居、勤務先、通常被害者がいる場所又はその付近において、被害者につきまとい、徘徊することを6ヶ月間禁止するものです。
② 退去命令(DV防止法10条1項2号)
配偶者を被害者と同居の住居から2ヶ月間退去させ、当該住居の付近を徘徊することを禁じるものです。着の身着のままで相手方のもとから逃げ出した被害者が、生活に必要な衣類その他の物資を、転居先とするところに運び出すために必要な期間とされています。
③ 電話等禁止命令(DV防止法10条2項)(19年改正)
被害者への接近禁止命令が出される場合に同時に又は追加的に出されるもので、以下の行為のいずれの行為も禁止するものです。
ア 面会の要求、
イ 行動を監視していると思われるような事項を告げ、またはその知りうる状態に置くこと、
ウ 著しく粗野または乱暴な言動をすること、
エ 電話をかけて何も告げず、または緊急やむを得ない場合を除き、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、もしくは電子メールを送信すること
オ 緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、もしくは電子メールを送信すること
カ 汚物、動物の死体その他の、著しく不快または嫌悪の情を催させるような物を送付し、またはその知りうる状態に置くこと
キ その名誉を害する事項を告げ、またはその知りうる状態に置くこと
ク その性的羞恥心を害する事項を告げ、もしくはその知りうる状態に置き、またはその性的羞恥心を害する文書、図書その他の物を送付し、もしくはその知りうる状態に置くこと
④ 子への接近禁止命令(DV防止法10条3項)(16年改正)
被害者への接近禁止命令の期間中、被害者と同居している未成年の子への接近禁止を命ずるものです。配偶者が子供に近付こうとすると、被害者が出て行かざるを得ず、被害者への接近禁止命令が換骨奪胎されないようにするために認められたものです。
この保護命令発令のためには、別途12条1項3号記載の事項(当該子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立の時における事項)を警察などに相談しておくことが必要です。
配偶者との面会交流が奪われる結果になる点の制度上の問題点が指摘されています。
⑤ 親族への接近禁止命令(DV防止法10条4項)(19年改正)
被害者への接近禁止命令の期間中、被害者の親族その他の被害者と社会生活において密接な関係を有する者への接近禁止を命ずるものです。立法趣旨は④と同じです。別途12条1項4号記載の事項(当該親族に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立の時における事項)を警察などに相談しておくことが必要です。
再度の申立(DV防止法18条)
暴力を振るった配偶者が6ヶ月経過すればおとなしくなるかというとそうとはいえません。当事者間の紛争が継続している限り危険性があるともいえます。他方、発令後6ヶ月間何もアクションがなければもともと暴力の危険性はなかったのではないかという見方もできます。
そのため、再度の申立が認められるかどうかはケース・バイ・ケースの判断であるとされています。
保護命令違反の効果
保護命令に違反した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(DV防止法29条)。
保護命令に対する不服申立方法
裁判の告知を受けた日から1週間以内にその地方裁判所を管轄する高等裁判所に即時抗告する方法によります(DV防止法16条)。