「離婚したら厚生年金ってどうなるの?」
年金の問題は熟年離婚でよく問題とされます。
婚姻期間中の保険料納付は、夫婦の互いの協力によって、夫婦の老後の生活費の保障をしていたものと考えられますので、妻が専業主婦だった場合にも、夫の厚生年金の報酬比例部分を2分の1に分割することができます。これを年金分割といいます(平成19年4月1日以降の離婚に適用されます)。
年金分割の具体的手続
社会保険事務所等に対して「年金分割のための情報通知書」を請求し、それをもとに婚姻期間の夫婦2人の標準報酬総額を計算し、額の多い方が少ない方に差額を分割することになります。
割合は50%を上限に夫婦で話し合って決めますが、単なる合意では足りず、公証役場で公正証書を作成するか又は合意書に公証人の認証を受けることによって、合意した分割割合等を明らかにする必要があります。
合意ができなければ家庭裁判所に按分割合を定めるよう審判や調停を申し立てることになります。
当事者間で合意した分割割合等について公正証書の作成等又は裁判手続により分割割合が定められた後、実際に離婚時の年金分割制度を利用するためには、当事者の一方により社会保険事務所等で年金分割の請求手続をする必要があります。
請求期限は、離婚した翌日から2年以内となっており、これを経過すると請求できなくなります。
よくある勘違いについて
年金には、国民年金、厚生年金、共済年金があります。
国民年金は、全国民が加入する年金制度で、原則65歳になると老齢基礎年金として定額の基礎年金が給付されるものです。
厚生年金は、主として日本の民間企業の労働者が加入する公的年金制度で、国民年金の上乗せ部分になります。
共済年金は、国家公務員や地方公務員が加入する公的年金制度で、国民年金の上乗せ部分になります。
年金分割が問題となるのは、この国民年金に上乗せしてある厚生年金や共済年金の報酬比例部分です。したがって、国民年金だけの、たとえばずっと自営業の人は、年金分割の対象となる年金がありません。
基礎年金部分は分割されませんので、年金分割の結果、年金が半分になるわけではありません。
年金分割は、分割されてすぐに受け取れるものではなく、受給開始年齢に達しないと受け取れません。
年金の問題はそれぞれの生活設計に大きな影響を与える問題なので、専門の弁護士に相談し、正しく理解することをお勧めします。
弁護士法人ユスティティア森本綜合事務所は、年金分割のご相談も承っています。