「別居を検討しているが、生活費が不安」
「夫の収入で生活していたので、別居後の生活維持がとても大変」
といったご相談をよくいただきます。
離婚の協議中、調停中、訴訟中であったとしても、夫婦はお互いが同程度の生活を続けられるように、お互いを扶養する義務があります。
婚姻費用分担義務は、民法760条に定めており、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」とされています。これは、一般的には、自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務=生活保持義務であると理解されています。
どちらか一方の収入が少ない場合には、収入の多い側が少ない側へ生活費を渡すように要求する権利があり、これを婚姻費用分担請求権と言います。
婚姻費用とは、夫婦と未成熟子によって構成される婚姻家族がその資産、収入、社会的地位等に応じた通常の社会生活を維持するのに必要な費用(大阪高決昭和33年6月19日家月10巻11号53頁)をいい、配偶者各自の生活費のみならず未成熟子の教育費を含みます。具体的には、通常の衣食住の費用のほか、子の出産費・教育費、医療費、相応の娯楽費等が含まれます。
離婚が決着するまでは、婚姻費用として生活費をお互いに分担しなければなりません。
婚姻費用の金額は、裁判所が早見表で示しているので、それを目安に話し合いましょう。
相手が婚姻費用を払ってくれない場合には、婚姻費用の分担請求調停を申し立てることができ、協議が整わない場合には自動的に審判に移行し、家庭裁判所が判断します。
始期について、過去に遡って請求できるか議論があり、申立時からとの見解もあるため、早めに申し立てることが必要です。終期については、別居の解消又は離婚成立時までとするのが一般的です。同居していながら生活費が全く払われていない場合にも、婚姻費用分担の請求はできるものと考えられます。
婚姻費用分担を家庭裁判所の調停又は審判で決めていた場合、家庭裁判所に申し出れば、義務の履行状況を調査し、義務者に対してその義務の履行を勧告することができるという履行勧告の制度があります。
適正に婚姻費用をもらうためにも弁護士にご相談することをお勧めします。