パワーハラスメント
Q 私は,会社の代表取締役ですが,社員に「何をやっているのだ」「期限をしっかり守りたまえ」と常日頃から言っています。また,覇気のない社員に対しては,「やる気がないなら辞めろ」と強い口調で言っています。
社員からパワハラであると言われて,訴えられないか不安でたまりません。
社員からパワハラであると言われて,訴えられないか不安でたまりません。
A 業務改善を目的とした注意,叱責が違法となることはありません。
但し,「馬鹿」「死ね」等といった人格的批判に当たる場合には,いくら上司の注意や叱責とはいえ,不法行為になる場合があります。
但し,「馬鹿」「死ね」等といった人格的批判に当たる場合には,いくら上司の注意や叱責とはいえ,不法行為になる場合があります。
パワハラとは
職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。
上司対部下の関係だけでなく,同僚同士や,部下から上司に対してもありえます。
同じ職場内に限らず,取引先相互間や顧客から取引上の優位を理由になされる場合もありえます。
例えば,①暴行・傷害(身体的な攻撃),②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃),③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し),④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害(過大な要求),⑤業務上の合理性なく,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求),⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)等がその例としてあげられています。
従業員のパワハラ行為に対する会社の対応
この問題もセクハラ同様前提として事実関係の調査が必要です。被害者からの苦情相談の受付け,加害者からの事情聴取を行い,事実関係が認められた場合,その程度にもよりますが,加害社員への厳重注意のほか,懲戒処分も考えざるをなくなるでしょう。
事実関係が確認できない場合は,会社としては静観せざるを得ませんが,事実関係が確認できなかったことの報告を被害社員にしておくほか,加害社員に対しては,そのように受け止められることのないよう十分注意するように言い含めることが必要でしょう。また,場合によっては配置転換や移動も検討に値するのはセクハラの場合と同様です。
裁判では,メールや録音などの証拠が必要なため,パワハラの立証がなされることは稀です。
パワハラの裁判例
Y1は,タクシー事業等を営むY2株式会社の代表取締役であり,Y2においては,「運転チェック」とのシステムが採用され,事故を起こした乗務員に対して安全運転のための指導等が行われており,Y1による運転チェックも実施されていた。X1ないしX6は,Y2のタクシー乗務員として勤務していた。Y1は,X1らそれぞれに対する運転チェックを行った際,「キチガイ」「あほ」「辞めろ」などの暴言を吐き,自動車内で運転席などの背後を蹴りつけるなどした。X1らがY1の暴言,暴行に係るパワハラにつき,Y1に対して民法709条,Y2に対して同法715条に基づき損害賠償を請求した事案において,裁判所は慰謝料として各30万円を認容しました(東京地裁平成26年12月10日判決・判時2250号44頁)。
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