1 契約書とは
契約書とは,契約を締結する際に作成される当該契約の内容を表示する文書のことです。
これによって契約当事者間に債権債務関係を発生させます。
しかし,日本の民法では,契約書を作成することは,保証契約など一部の例外を除けば,契約成立の要件ではありません。
契約書作成自体には手間がかかることから,契約書が作成されず,口頭だけで契約を成立さえている場合が少なくありません。特に,法務機能が充実していない中小企業ではその傾向が顕著です。
そのため,契約内容についての当事者の見解が食い違うことが発生した場合にどちらの言い分が正しいのかどうかの成否を判断することが容易ではありません。
このような紛争発生の防止及び裁判になったときに容易に紛争が解決できるようにするために,契約書を作成しておくことが必要になってきます。
2 契約書の重要性
改めて契約書の重要性について言及しましょう。
契約当事者が法律の適用を排除する内容の合意をしたり法律の規定と異なる契約条件を定めたときは、私的自治の原則や契約自由の原則から,原則として,当事者の意思が法律よりも優先します。
法律の規制の中でも,当事者の意思で変更できる任意法規と呼ばれる領域がこれに相応します。
お互いの共通認識を書面化しておくことで,後日紛争が発生した場合に,そのような合意がなかったということはできなくなります。
また,契約を守らない場合という不測の事態が発生したときに備えるという点においても,健全な企業活動におけるリスク管理の面から見て,いかに契約書が重要なツールかが分かると思います。
他方,企業活動を行う上で、様々な取引関係上の法的規制が存在します。法律上の規制には,当事者の合意では変更できない強行法規という領域が存在します。
従業員との契約における労働法規の規制や,消費者との契約における消費者契約法や特定商取引に関する法といった消費者保護の法律が適用される領域では,強行法規の規制が多く存在しているので,これらに反しないように作成しなければなりません。
折角作成しても法律上効力がないということになっては意味がありませんので,契約書の作成,そして法律の専門家による弁護士によるリーガルチェックをお勧めします。
3 契約内容の当・不当の検証(自社にとって有利か,不利かという面から判断する)
大企業との取引であれば,一方的に作成された契約書に署名押印を求められることが多いと思います。逆に,取引的な立場として自己が優位に立っていれば,こちらが作成した契約書に署名押印をしてもらうことは容易にできてしまいます。
このような契約上の立場上の優位性から契約内容が定められることが多いという実情がある点は否定できません。
そして,契約の内容も契約上有利な立場にある側に有利に作成されていることが多いことも否定できません。署名押印の時は軽く考えていて,いざ紛争が発生したときに,自分に不利な内容になっていたということに初めて気付くということもよくあることです。
そうであれば,まずは,署名押印する前に契約内容が実際には自社に不利になっているのかをチェックする必要があります。対等の立場で一から作成するときは,どのような内容にすれば自社に有利になるかを考える必要があります。ただ,契約書さえ作成しておけばいいというだけでは,契約書の持つ機能を生かしていません。
自社の意に沿わない契約書の調印を求める取引先が契約の立場上優位に立っている際に,どう対応するかは実際には難しい問題です。しかし,安易に応じないようにしないといけません。
社内的な稟議が通らないとか,顧問弁護士や税理士,金融機関からの指導を盾に,契約内容を変更してもらうように粘り強く担当者と交渉してみることが必要です。
実際,変更をお願いすれば,意外と融通が利く場合も多いように思います。
特に,強行法規の規制に違反している内容であれば,その部分は無効となる可能性が高いので,必ず変更しないといけないので,それにもかかわらず変更に応じないような会社はまともな会社ではないと言っても言い過ぎではありません(場合によっては,そのような会社と取引をすること自体がどうかということを考えないといけないかもしれません)。
既に契約している場合には,契約の更新時期や担当者の異動時期等のタイミングを見計らって契約の見直しを求めることも必要です。
契約の手間暇の点から,正式な書面作成をしたがらない相手先や,小口の取引のため事務処理を簡素化したいという自社の都合で,契約書の作成が難しいときには,最低限の処置として,受注書,発注書や見積書に契約条件を記載して交付しておけば,契約内容の主張が可能となる場合があるかと思います。
4 債権回収の点から契約書を作成する
連帯保証人をつけてもらう,不動産に担保権を設定してもらう,契約書を公正証書にすることで強制執行の手間を省くといった債権回収の面からの検討を契約締結の段階からしておくべきです。
>>>債権回収についてもっと詳しく知りたい
5 契約書の作成と保管
通常は,会社の代表者や代理権限のある支店長などの署名に変わる記名・押印(ゴム判と実印が押印されるのが通常)で締結されます。
印鑑証明書が必要かはケースによって異なります。
連帯保証人を付けていて,その方の署名意思の確認のために印鑑証明書を徴求することは,むしろ必要な場合にあたります。
契約書が印紙税法上の課税文書に該当する場合には,作成した契約書正本毎に印紙税法に定められた額面額の収入印紙を貼る必要があります。
但し,印紙を貼っていなくても,契約書の効力は否定されません(税務署の税務調査の際に指摘されて課税されるだけのことです。それを避けるためには貼付していた方がよいことは言うまでもありません)。
契約書は当事者の数だけ作成し、各自1通を保有するのが一般的です
印紙代を節約するために1通だけ作成し,残りはコピーにしておくこともできます。
契約書の保管方法は,契約書及びその関係書類を集めた契約書綴りで保管することがお勧めです。
契約書を紛失したり,更新を忘れたりすることを防止するようにしないといけないので,ジャンルごとに分けての保管が望ましいと思います。
6 契約書の種類
当事務所は,多数の企業の顧問に就任しています。
当事務所で作成・リーガルチェックに関与した契約書の種類は、企業形態・取引形態によって様々なものがあります。
以下では、契約書の種類の一部を掲載します。
賃貸借契約 土地賃貸借契約書
建物賃貸借契約書
定期借地権設定契約書
定期借家契約
消費貸借契約 金銭消費貸借契約書
会社関係 株式譲渡契約書
営業譲渡契約書
継続的取引契約書
労務関係 雇用条件通知書
身元保証書
建築関係 業務委託契約書
発注書・受注書
追加工事に関する請負契約書
介護施設関係 施設利用契約書
重要事項説明書
7 当事務所のサービス
当事務所は,大企業から中小企業の方のまで様々なニーズに対応することができます。貴社の企業活動について詳細にヒアリングをした上で,ご相談段階から契約締結段階までサポートします。
契約書1通の作成を行うスポットでの業務対応,継続的な契約書のリーガルチェックサービスをご希望の方との間では顧問契約を締結した上での対応等用途に応じたサービスを提供することが可能です。
(1) 相談から契約締結までのスポット業務サポート
契約書のリーガルチェック,作成援助に関する相談,弁護士による契約書の作成,契約書交渉の相談等様々な契約締結までのリーガルサポートを致します。
(2) 顧問契約締結による継続的なサポート
契約書の作成・リーガルチェックのスポット依頼も対応していますが、契約書の作成・リーガルチェック等が継続的に発生する場合には、顧問契約の締結をお勧めします。
相談先企業様と当事務所との間で継続的な関係を構築することで,相談先企業様の業務内容を深く理解することができ,より適切かつ迅速なサポートが可能となります。
また,顧問契約を締結いただくことで,スポットでの業務依頼と比べて,よりリーズナブルな費用で弁護士のサポートを得ることが可能になります。
>>>顧問契約の業務メリットについて知りたい。
(3) 契約書のひな形は必要ですか?
契約書のひな形があるなくとも,詳細なヒアリングができれば,その問題点に応じた通常の契約書と違うカスタマイズした契約書を作成することが可能です。
むしろ,特注式の自社の問題点に応じた契約書の作成こそが望まれる契約書であるといえます。