1 定期借地権とは
定期借地権とは、平成4年8月1日に施行された借地借家法において設けられた制度で、土地を貸すときにあらかじめ決めた契約期間が終了すると確実に貸主に返還されるというものです。
普通借地契約では、借地期間が到来しても正当事由がなければ更新の拒絶ができませんが、定期借地契約においては正当事由制度を排除し、期限が到来すれば土地の返還を求めることができることになります。これまでは貸主側によほどの事情がない限り契約は自動更新されてしまい、なかなか貸主のもとに土地が返還されず、その結果土地を貸す人が少なくなって、ひいては土地の有効利用が妨げられるということが問題視されていました。そこで、定期借地権という制度が導入されたのです。
2 定期借地権の種類
定期借地権には、一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用借地権の3種類の借地権があります。
ア 一般定期借地権(借地借家法22条)
一般定期借地権の存続期間は50年以上であり、契約の更新による借地期間の延長がないことの特約をその内容とします。したがって、期間満了後借主は、原状回復をして建物のない更地状態で返還しなければなりません。また、借地期間内に建物を再築した場合にも借地期間の延長がないという特約も必要です。
さらに、借地期間が終了したときに借地権者が建物買取請求をしないとする特約をして、建物買取請求権を排除することができます。これらの3つの特約は必ずしなければ定期借地契約であるということになりません。契約は必ず公正証書等の書面でしなければなりません。土地利用上の用途に制限はありません。
一般的借地権は、土地所有者から定期借地権の設定を受けて、住宅を建築し、定期借地権付住宅として分譲するという形態で発達しました。借地権者が保証金を預けるのが一般的な形態になっています。賃貸借当事者の変更に伴う保証金の承継につき疑義が生じないよう契約書に明記しておくことが望ましいと思われます。
また、マンション敷地として一般的定期借地権を利用することも行われるようになっています。マンション敷地として利用した場合、期限到来時の建物取り壊しは戸建て住宅に比較してやっかいな問題をもたらすことが予想されています。
イ 建物譲渡特約付借地権(借地借家法23条)
建物譲渡特約付借地権の場合は30年以上であり、契約期間が経過した後に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定める借地権です。地主は30年以上経過したあと建物を買い取り、借地権も土地所有者に帰属し、借地権は土地所有権に混同して消滅することになります。
建物譲渡特約の効力が発生したときに、借地上の建物について借家権を有する者があるときは、請求をすれば、請求の時にその建物につき期限の定めのない賃貸借(残存期間があるときは、残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなすという法定借家権の規定が定められています(借地借家法23条2項)。
ロ 事業用借地権(借地借家法24条)
事業用借地権は、要件として、①借地の目的が専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものは除く。)の所有目的でなければならないこと、②存続期間を10年以上20年以下と定めなければならないこと、③契約は公正証書によってしなければならないことが規定されています。
この要件にしたがった借地契約をした場合、借地期間に関する規定、法定更新に関する規定、建物買取請求権の規定、建物再築の代諾許可非訟手続の規定は当然に適用されません。専ら事業の用に供する建物に限られるため、店舗兼住居用建物を所有の目的とすることもできません。たとえば、郊外用の店舗、ファミリーレストラン、遊技場、日用雑貨店、スーパーマーケットなど短期間に収益を上げてその事業から撤退する場合などに利用されることになります。
3 定期借地権のメリット
貸主側のメリットは、土地を手放すことなく固定資産税の支払いができるだけの地代収入が長年にわたり確保できます。地代収入による長期安定経営が実現できます。
相続税対策としても、土地の評価額が圧縮されることで節税効果が大きいことが指摘されています。
借主側のメリットは、住宅取得コストが下がることです。一般定期借地権を利用した建売住宅の価格は、土地を購入しないため、所有権タイプの分譲価格よりも割安になっています。そのため、敷地面積や延べ床面積が広く、良質な住宅取得ができることになります。
また、土地を借りて事業を営む場合、土地費用の負担が少なく事業展開ができるので、事業の可能性が広がります。
4 定期借地権のデメリット
貸主側のデメリットは、一般定期借地権であれば50年以上土地利用が拘束され土地の処分がしにくいという点、住宅用地を戸建てやマンションで活用した場合の地代の水準が低いという点があげられます。
借主側のデメリットは、土地を返還しなければならない、土地が値上がりしてもその利益を取得できない、中古で売却ができるか心配などといった点があげられます。