長崎県弁護士会所属

弁護士歴30年、長崎県弁護士会会長を経験した代表弁護士をはじめ、4人の弁護士が対応します

諫早事務所(主事務)

島原事務所

長崎事務所

相続法の歴史~旧法の適用関係

旧民法(明治31年民法)

1 家督相続

旧民法(明治31年民法)には,家督相続という制度が存在しました。
家督相続とは,1人の家督相続人が,前戸主の一身に専属するものを除いて,前戸主に属する一切の権利義務を包括的に承継することをいいます(旧民法964条以下)。
武家の相続が長子単独相続であったため,明治初頭に,華族や士族についても長子相続となり,一般庶民についても同様とされました。但し,法令は存在せず,太政官布告や太政官指令という形式でした。明治31年に制定された旧民法でも武家法的な長子相続を承継しています。
家督相続の第一順位は,「家族タル直系卑屬」で,その中では,第1に親等の近き者を先に,第2に親等が同じであれば男子を先に,第3に親等の同じ男子又は女子の間では嫡出子を先に,第4に親等の同じ嫡出子,庶子,私生子の間では,女子であっても,嫡出子,庶子であれば私生子男子よりも先に,第5に同じ順位の間では年長者を先にとしています(旧民法970条)。
妾腹の男子は,正腹の女子よりも先順位となるので,「腹は借り物」でした。
長男の単独相続のため,二男や三男には「カマドの灰一握りも分けられることはなかった」のです。
また,子が親の家を継ぐ場合には,相続放棄が許されませんでした。直系卑属は,債務超過の相続であっても放棄ができず,家名は継がなければならないという家のための制度となっていました。

2 旧民法が適用される相続

明治31年7月16日から昭和22年5月2日以前に死亡した場合に適用されます。
旧法中に開始した相続については,原則として旧法の親族法,相続法が適用されます(民法附則25条1項本文)が,旧法中に開始した家督相続で,新法に至るまで家督相続人を選定しなかった場合には,その法的処理がないので,新法の親族法,相続法が適用されます(民法附則25条2項本文)。

応急措置法

(日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律)

1 日本国憲法の理念に反する部分を廃止しました

  「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」に反する部分を応急的に廃止しました。

2 具体的には,

① 家督相続を廃止して,遺産相続法に従う(同法7条)とすることで,財産相続に一本化すること,
② 血族相続人として,直系卑属,直系尊属,兄弟姉妹の3種を定め,それと併行して配偶者が常に相続人となることを認めました(同法8条)。

3 応急措置法が適用される相続

昭和22年5月3日から昭和22年12月31日以前に死亡した場合に適用されます。
第1順位 第2順位 第3順位
配偶者 1/3 配偶者 1/2 配偶者 2/3
直系卑属 2/3 直系尊属 1/2 兄弟姉妹 1/3
応措法8条2項1号 応措法8条2項2号 応措法8条2項3号

現行民法制定(昭和22年法律222号)

1 現行民法の特徴は,改めていうまでもないと思いますが,

 ① 家督相続を廃して,相続を財産相続に一般化したこと,
 ② 配偶者の相続権を強く認めたこと,
 ③ 長子単独相続を諸子均分相続に改めたこと,
 ④ 祭祀承継を相続財産から分離し,その承継者を相続人とは別に慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者としたこと等です。

2 下記のような法定相続分での適用範囲

昭和23年1月1日から昭和37年6月30日までがその適用範囲です。
第1順位 第2順位 第3順位
配偶者 1/3 配偶者 1/2 配偶者 2/3
直系卑属 2/3 直系尊属 1/2 兄弟姉妹 1/3
昭和22年民法900条1号 民法900条2号 民法900条3号

昭和37年改正

1 主な改正内容

① 特別失踪の失踪期間3年を1年に短縮,期間満了の時とされていたのを危難の去りたる時と改正しました。
② 同時死亡の推定規定(32条の2)を新設。
③ 代襲相続の原因たる相続人の死亡を「相続開始以前」とし,同時死亡の子の子も代襲相続権を取得することになりました。
④ 代襲原因をⅰ相続開始以前に死亡したとき,ⅱ相続欠格となった時,ⅲ排除判決を受けたときの3つに限定し,相続放棄は代襲原因にならないことが確定しました。
⑤ 第1順位の相続人を子と定めることで孫以下の直系卑属には固有の相続権がないことを明記しました。
⑥ 相続人不存在の規定を改正し,特別縁故者の規定を設けました。

2 下記のような法定相続分での適用範囲

昭和37年7月1日から昭和55年12月31日までがその適用範囲です。
第1順位 第2順位 第3順位
配偶者 1/3 配偶者 1/2 配偶者 2/3
2/3 直系尊属 1/2 兄弟姉妹 1/3
昭和37年民法900条1号 民法900条2号 民法900条3号

昭和55年改正

1 主な改正内容

 ① 配偶者の相続分を引き上げました。
 ② 兄弟姉妹の代襲相続について再代襲をみとめないことにしました。
 ③ 寄与分制度が新設されました。
 ④ 遺産分割の基準の明確化が図られました。
 ⑤ 遺留分についても,配偶者の遺留分率を引き上げました。

2 下記のような法定相続分での適用範囲

昭和56年1月1日から現在までがその適用範囲です。
第1順位 第2順位 第3順位
配偶者 1/2 配偶者 2/3 配偶者 3/4
1/2 直系尊属 1/3 兄弟姉妹 1/4
現行民法900条1号 民法900条2号 民法900条3号
この記事を担当した弁護士
弁護士法人ユスティティア 代表弁護士 森本 精一
保有資格弁護士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
専門分野企業法務、債務整理、離婚、交通事故、相続
経歴
昭和60年3月
中央大学法学部法律学科卒業
(渥美東洋ゼミ・中央大学真法会
昭和63年10月
司法試験合格
平成元年4月 最高裁判所司法修習生採用(43期司法修習生)
平成3年4月
弁護士登録(東京弁護士会登録)
平成6年11月
長崎県弁護士会へ登録換
開業 森本精一法律事務所開設
平成13年10月 CFP(ファイナンシャルプランナー上級)資格取得
平成14年4月
1級ファイナンシャル・プランニング技能士取得
平成25年1月
弁護士法人ユスティティア設立
専門家紹介はこちら
PAGETOP