相続が発生して、相続人の間で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて、法的手続きをとることができます。また、調停がまとまらない場合には、審判続きに移行し、裁判官が審判を行います。
但し、そもそも遺産分割協議を行うにあたっての前提問題について主張が対立している場合には、人事訴訟や民事訴訟を申し立てて、判決を受けるという方法もあります。
前提事項を家事審判手続で判断できるかについては、最決昭和41年3月2日民集20巻3号360頁が、「審判手続において右前提事項の存否を審理判断した上で分割の処分を行うことは少しも差し支えないというべきである」と判示する一方、「審判手続においてした右前提事項に関する判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して右前提たる権利関係の確定を求めることを何ら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によって右前提たる権利の真否が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失う。」と判断しています。
そのため、前提事項については、訴訟手続で解決することが多く、その場合先行している遺産分割調停事件は裁判所から取り下げ依頼がなされることが多いように見受けられます。
事実関係を争う訴訟として、
①当事者の範囲の確定(婚姻・養子縁組、協議上の離婚、協議上の離縁の各無効、親子関係存否確認、親子関係不存在確認、認知無効、認知、相続権存否確認訴訟等)
②遺産の範囲の確定(遺産確認訴訟等)
③遺言,遺産分割協議の効力を争う(遺言無効確認訴訟、遺産分割協議無効確認訴訟等)
が考えられます。
協議や調停の段階で、これらの事実関係に争いがある場合で、話し合っても平行線を辿ることは必至と思われる場合には、訴訟も視野に入れるべきです。訴訟を提起するかどうかの判断は、相続の全体像の中で、証拠関係を踏まえた訴訟の結果などを想定して行うべきです。
遺産分割の訴訟の流れや、訴訟になった場合の可能性などについては、弁護士法人ユスティティア森本綜合法律事務所にご相談ください。